交差点カウントの限界と学び:信号停止が引き起こす6倍過検出の正体
2026-04-21
検証条件
検証結果
| 項目 | AI計測 | 手動計測 | 精度 |
|---|---|---|---|
| ラインなし(初期設定) | 1,431 | 243 | 590%過検出 |
| 横ライン y=65% | 30 | 243 | 12.3% |
| 縦ライン x=55%(最良) | 91 | 243 | 37.4% |
考察・ポイント
- 01ラインなし設定では1431台を検出(GT比590%過検出)。信号待ちで停止→発進するたびにByteTrackが新しい追跡IDを付与するため、同一車両が平均5〜6回カウントされる。交差点では絶対にカウントラインが必要。
- 02横ライン y=65%では30台しか検出できなかった。GTのアノテーション分布を分析したところ、車両の大半はy=40〜50%(上部車道)とy=80〜90%(下部車道)に集中しており、y=65%は両車道の中間(非通行エリア)に配置されていた。ROI解析なしにライン位置を決めると失敗する典型例。
- 03縦ライン x=55%では91台を検出。運動方向分析で95%の車両が横移動(左右)と確認されており、縦ラインは理論上すべての横移動車両を捕捉できるはず。しかし実際には37%に留まった。多方向交通と信号停止中の検出漏れが主因と推定。
- 04交差点カウントの根本的課題:幹線道路と異なり、交差点では車両が四方から流入・流出し、一部は画面内で方向転換する。単一カウントラインは一方向の通過車両にしか対応できず、多方向交通の全体像把握には複数ライン設定または専用のインターセクション解析手法が必要。
Urban1 データセットの特性
Urban1はスペイン・アルカラ大学が公開するGRAM-RTMデータセットの交差点シーケンスです。600×360解像度、約937秒(23,400フレーム)の映像に、研究者が全フレームを人手でアノテーションしたグランドトゥルース(GT)が付属しています。GT内訳はcar=230台、bus=4台、motorbike=9台の計243ユニークIDです。M-30・M-30-HDとは異なり、信号機のある市街地交差点という難易度の高い環境です。
ラインなし設定で1431台:信号停止が引き起こす6倍過検出
デフォルト設定(カウントラインなし)での結果はAI=1431台、GT比590%の過検出でした。原因はByteTrackの再認識ミスです。交差点では信号待ちで車両が停止し、赤→青の切り替え時に一斉発進します。この停止→発進のサイクルが繰り返されるたびに、ByteTrackは各車両に新しい追跡IDを付与します。243台のユニーク車両が平均5〜6サイクル検出されることで、1431という数値が生まれました。
この問題はM-30-HDの俯瞰映像でも見られましたが、交差点では信号サイクル(平均30〜90秒)が繰り返し発生するため影響が圧倒的に大きくなります。交差点映像にカウントラインを設定しないことは、技術的に誤った設定です。
横ライン y=65% の失敗:ROI分布を無視したライン配置
M-30-HDで効果を発揮した横ラインをUrban1に適用しました。y=65%(中央やや下)に設定したところ、検出台数は30台(GT比12.3%)と大幅に過少検出になりました。
GTのアノテーション座標を分析したところ、車両centroid y座標の分布が二峰性(bimodal)を示していることが判明しました。車両の多くはy=40〜50%(上部車道)とy=80〜90%(下部車道)に集中しており、y=65%付近はほぼ通行のない分離帯・路肩エリアに相当します。最大通行量のエリアを外したラインは機能しません。
縦ライン x=55% への転換:37.4%まで改善
GT車両の運動方向を分析すると、95%が横方向(左右)に移動していることが確認されました。横移動車両には横ラインではなく縦ラインが有効です。x=55%(中央やや右)に縦ラインを設定した結果、AI検出は91台となりました。
過検出から過少検出へと問題が逆転しましたが、GT比37.4%という数値は交差点カウントの構造的限界を示しています。縦ライン1本ではフレーム内の特定エリアを横断する車両しか検出できません。交差点内で方向転換する車両、ラインを横断せずに消える車両、信号停止中に検出漏れした車両などが合算して63%の未検出につながっています。
交差点カウントに単一ラインが向かない理由
幹線道路(M-30・M-30-HD)では車両が一方向に流れるため、単一ラインが高精度(86〜91%)で機能します。一方、交差点では以下の要因が精度を下げます:
- 多方向流入:東西南北の4方向から車両が流入・流出するため、単一ラインでは全方向を捕捉できない
- 方向転換:右折・左折車両は水平方向と垂直方向の両方に移動するため、縦ライン・横ラインのどちらかしか捕捉できない
- 信号サイクルによる検出漏れ:停止中の車両は信頼度スコアが低下し、ByteTrackの追跡が途切れる
交差点分析の正しいアプローチ
交差点での正確なカウントには、入口ごとにカウントラインを設定する「方向別カウント」が必要です。例えばx=10%(西側入口)とx=90%(東側入口)に縦ラインを2本、y=10%(北側入口)とy=90%(南側入口)に横ラインを2本設定することで、全方向の通過車両を個別に計測できます。現在のVisionCount AIは1本のカウントラインをサポートしており、複数ライン対応は今後の開発課題です。単一ラインでの交差点カウントは「特定方向の通過車両を把握したい」という限定的なユースケースに適しています。
